映画 記憶にございません! 感想

映画 記憶にございません! 感想と考察について。

 

1.感想について。

三谷幸喜監督に万歳!、万歳!です。私が求めていた喜劇はこんな感じよという思いです。スミス都へ行く「デーヴ」を彷彿させていて面白いのです(実際監督も参考にしています。)三谷幸喜監督は、【政治を皮肉ったつもりもない】と述べています。しかし、本作は総理大臣がまともに政治をするシーンがないのです。舞台挨拶でも、【政治を全くしていないので、政治を知らなくてもみれます】と言っています。これが、まさに現内閣では全く政治をしてないよねっという皮肉が効いていると思えましたね。しっかりしろよ、総理大臣!そんな、メッセージ性が裏に隠されているとも思えます。現内閣や政治に不満がある方(ほとんどの人がそうかも!?)は、本作を見たことですっきりとした爽快感がありますよ。

劇場での笑い声も多く、老若男女問わず、幅広い世代の方たちが見ていましたね。

話は少し変わりますが、喜劇として、エンターテイメント、政治コメディとして十分に面白い作品だということは言えます。しかし、上映されるまでは不安でいっぱいでしたね。三谷幸喜監督作品は面白いのですが、やっぱり映画監督より舞台の方が面白い印象です。特に、「ベッジ・パードン」が最高に面白いです。映画監督として、酷評の嵐にあったこともあります。それは、前作の映画「ギャラクシー街道」では評価はかなり悪かったのです。個人的には笑えて好きですが、長所を挙げることがかなり厳しいです。三谷幸喜監督にはSFは合わないというレッテルが貼られた映画だとも思いましたね。

悪い印象というのは、映画.comでは☆2.1、Filmarksでは☆2.4、coco映画レビューサイトでは、残念という意見が多いと言う結果。「笑い所がなかった」や「劇場で笑い声は聞こえなかった」など、喜劇が悲劇になりました。他の作品、「ステキな金縛り」や「清須会議」や「ザ・マジックアワー」などは☆3.5前後で、満足度も高いのです。

また、興行収入という側面で見ると

・2006年公開「THE 有頂天ホテル」累計60億8000万円
・2008年公開「ザ・マジックアワー」累計39億2000万円
・2011年公開「ステキな金縛り」累計42億8000万円
・2013年公開「清須会議」累計29億6000万円

・2017年公開「ギャラクシー街道」累計10億円とか!?

すごい差ですよね。赤字ですね。きっと全然回収できないのではなかったでしょうか。

それが、なんとなんと!!「記憶にございません!」公開し9月18日までで観客動員80万人、興行収入10億円突破という数字を記録しています。すでに、前作を超えています!

以上のことから、映画的側面、興行的側面において、十分期待ができる作品だと言えます。まぁ、前作の酷評についても記憶にございません!と言える作品だと言えます。

 

2.本作の物語について。

支持率2.3%、歴代最悪のダメ総理。民衆の嫌われ者の彼は、石をぶつけられ記憶喪失に!記憶喪失を知るのは秘書官3人のみのトップシークレット!!記憶を失った男が、捨て身で自らの夢と理想を取り戻す!果たしてその先に待っていたものとは・・・?

 

3.本作の長所と短所について。

〇長所

①邦画版「デーヴ」と言って良し!過言ではない、邦画や日本の政治という視点において、新しい政治コメディ映画の誕生!!

映画「デーヴ」物語は?

ボルティモアでパートタイムの職業斡旋所を経営するデーヴ・コーヴィックが、ビル・ミッチェル大統領の影武者として雇われた。 当初は警護が万全ではない場面だけの起用だったが、大統領の急病によりその権力を狙う側近によって傀儡として祭り上げられる。 しかし、大統領として過ごすうちに、自身の良心に従い行動するようになっていくのであった。 という内容です。

脚本のゲイリー・ロス(Gary Ross)はアカデミー脚本賞(1993年)に、ケヴィン・クラインゴールデングローブ賞 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)(1993年)に、それぞれノミネートされています。つまり、名作ですよ。

その「デーヴ」を参考にされた本作は、確かに似た雰囲気を感じさせてくれます。しかし、1993年の映画から26年が経っている現代では、ニュアンスや言葉遣い、時代と政治課題が全然違うため、本作は現代版としてしっかりと昇華した上に、日本の政治家らしい要素(結局強行採決、女性軽視、公用車の乱用、国会を休む理由がしょうもないなど)が見事に全面に出されているところに拍手喝采です。

②記憶を失ったことは悲劇!?記憶が失ったことは喜劇!?

記憶を失った設定は、政治のことはまるっきりわからない状態です。つまり、小学生並みの知識なんです。常に不安な状態で、アメリカ大統領は来るし、奥さんや1人息子との関係も劣悪、野党と不倫をしているなど、ひどい状態であることに、記憶を失っている自分が驚くわけです。少し可哀そうな気もします。記憶がないのに、以前の自分はなんともひどいことをしているんだと示されるわけですから。また、民衆も敵なわけで、ちょっと外を歩けばブーイングの嵐なわけです。

しかし、恐るべき存在の官房長官にも堂々と話すことができたり、知らないから思い切った行動に踏み出せるところが、絶妙な喜劇です。悪の権化であった人物が、記憶を失い悪意のない質問に対しても、不信感や托卵でいるのではと周りに絶妙な圧力がかかっているのも面白いとこです。

まぁ、政治をまるっきりわからない状態の彼は、一から勉強しなおします。小学校のときの先生に頼むところから始まります。責任感を背負い、しっかりその問題に向き合う姿勢には、総理変わったなと思えますが、もしそんな舞台裏があったら、大丈夫かこの総理と思わせる二面性において、おもしろい一面でした。

③あくまで、リアリティーを出す部分と、抑える部分の創意工夫!それぞれのキャストに合ったあてがきによる、それぞれの俳優の新しい引き出しが見れる!

三谷幸喜監督の特徴といえば、その役者をイメージしたあてがきをされる点です。今回も、中井貴一とコメディ映画を作る視点から、どういう風に役者を魅せたら面白いのかを考えて作られてます。小池栄子、ディーンフジオカ、田中圭石田ゆり子、吉田羊なども、しっかりとしたキャラクターが出来上がっているのも監督の手腕だと思えます。

またリアルすぎると面白くないという視点において、日本の国旗を出さずライオンの像に置き換えて表現したり、邸宅に置かれているペンギン(私的考えにおいて、皇帝を示している印象です。監督は否定していますけど。)、閣議や国会での論戦ばかりでなく、アメリカ大統領とのゴルフシーンを入れて明暗をつけたりと、非常に見やすい配慮をしてくれています。

 

〇短所

石田ゆり子さん、どんまいです!ただ、可愛いだけで、あんまりコメディエンヌの才能はいまひとつ!!

石田ゆり子は、コメディエンヌとしての自信があることを三谷幸喜監督に伝えていたそうですが、現場では厳しかったようです。実際に映画を見た限り、可愛いだけで、面白くはないんですよね。可愛いから見ていて楽しいのですがね。総理大臣の奥さんとして、内閣の広報部を利用して、テレビショーをやっていることや総理秘書官と不倫していることから、ちょっと世間知らずで、1人で生活できないタイプの奥様感は出ていたのですがね。明らかに、小池栄子にとられていましたね。小池栄子があんなに、コメディセンスのある演技や動きや言葉遣いができるとは思わなかったです。MVPは限りなく、小池栄子と言えます。面白かった。特に、フラメンコを一生懸命に踊るシーンが良かったです。必死さとストレスフルな感じが出ていて好きです。

②もう少し、現政治に触れてもいいんじゃない!?内調が怖いか、三谷幸喜監督。

プロデューサーとも何度も相談しあった結果の本作の映画ですが、やはり政治モノや社会風刺を入れることで、スポンサーの協力も厳しくなるし、企業のイメージダウン、マイナスプロモーションになるリスクが高いことが言えます。そう思うと映画「新聞記者」は攻めている姿勢が好きです。「新聞記者」は中々尖っている作品なわけです。それでも、内調の攻撃があったとか、なかったとか。松坂桃李のイメージは上がった印象ではありましたね。

三谷幸喜監督は、特別「政治批判をやる映画ではない」と主張した上で本作を制作されましたが、もう少し皮肉ったメッセージ性があからさまに出てくるともっと良かった。政治批判をやる映画ではなくていいのです。ただ、映画はもっと自由であっていいと思います。だから、もう少し政治的要素を絡めた方が、より総理大臣の大変さや仕事内容といった面で面白く学べて、笑えることができたのかなと思いました。

③悪かった総理のシーンが足りない。後半にかけてのギャップの印象やメリハリが弱い。

冒頭で総理がどうして嫌われるのかがわかるシーンが出ています。それ以外で悪態が出ているシーンがほとんどないのです。良い総理のイメージで動いているから、悪態の時とのギャップの印象が薄く感じ取られてくるのです。また、後半にかけて、実は記憶が戻っています。スーツも変わるし、一人称も変わっているし、記憶が戻ったことはなんとなく示されています。だから、ラストの展開において、思わぬ結末感がエンターテイメントとして面白いのです。しかし、もっと悪態の強い悪い総理があると、他にもこんなことやってたのかと思える気がして、良い総理のときに笑えると思います。

 

4.本作の見に来て欲しい人たち!!

①やっぱり、三谷幸喜監督ファン!+三谷常連役者人ファン!

三谷幸喜は、

・日本人映画監督の有名ランキング26位

・好きな映画監督ランキング14位 別サイトでは6位

好感が持てる45〜49歳の男性有名人ランキング3位

Twitterフォロワー数7.9万フォロー。Instagramでは11542人です。

2017年に紫綬褒章を受章しています。

紫綬褒章(しじゅほうしょう)は「学術芸術上ノ発明改良創作ニ関シ事績著明ナル者」に授与される。「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」に授与されます。

・映画.comでは、check-in 2436人

・Filmarksでは、3829人のファンがついています。

 

また、三谷幸喜作品には、佐藤浩市が出ています。

佐藤浩市は、

三谷幸喜作品の「常連」俳優といえば?ランキング1位

・好きな三谷幸喜のドラマ・映画ランキング 5位にマジック・アワー

・「佐藤」で思いつく有名人ランキング 2位

・枯れ専大歓喜!最強の「イケおじ俳優」ランキング2位(有効回答者数:1005名(20~30代女性:複数回答))

・現時点で渋さナンバーワンだと思う俳優ランキング8位(有効回答者数:500名(20~40代男女:複数回答))

・芸能界一!かっこいいおしゃれおじさんランキング4位(有効回答者数:500名(20~40代男女:複数回答))

このことから、20代から40代女性はターゲットとなることが言えます。

 

また、本作の主人公中井貴一についても紹介します。

・「育ちがよさそうだ」と思う男性有名人ランキング6位(有効回答者数:500名(男性:250名 女性:250名))

・親の七光りなんて関係ない!二世タレントランキング7位(有効回答者数:500名(20~40代男女:複数回答))

・萌える「スーツ男子」ランキング9位

・2014年上半期ドラマ出演男優好感度ランキング5位

このことから、男女関係なく、人気と信頼があることがわかります。

 

②60代の男女。コアターゲットとして20代の男女。

この年齢層は、政治に最も関心のある年代と言われています。

20代から50代以下の年齢層は政治への関心度が低く、毎年政治への関心は下がっている傾向にあります。また、20代から40代に限っては50%をきっています。

男性の60代は政治への関心は75%、女性の60代は57.7%と言われています。

一方で20代の男性は35.2%です。1992年は49.6%あったのに、10%以上も下がっていることがわかります。20代の女性は26.8%、1992年は28.4%と、大きな変化はないです。

また、20代の年齢層に最も関心があるのは、「お金」「友人関係」「サブカル」「音楽・映像」「自身の将来」「仕事」 です。この年齢層を、本作にどうやって客として入れるかが、この映画の興行を伸ばすポイントと言えます。

20代層には「政治映画」というだけで、固い印象があり見る人は少ないことが考えられます。だからこそ、「全く政治をしていない映画です。」と銘うって番宣をしているわけですね。CM見る限りでも、日本の国旗を出さない工夫、閣議や国会の場面は出しすぎない工夫、このような点で若い層に見やすさを感じさせていることがわかります。

また三谷幸喜という喜劇の表現に長けている監督が作りましたよ!という告知だけで、見てみてもいいかもと思えます。なぜなら、今まで作った作品で硬すぎて、わかりづらいというコメントが少ないですからね。

さらに本作には田中圭がでます。女性へのファンがしっかりと根付いています。「おっさんずラブ効果」です。女子高生に、お父さんにしたいランキングで堂々の1位です。20代層の女性が見に来るきっかけとなってもいいと言えます。本作でもそれなりに活躍されていましたし、見どころは十分にあります。アメリカンポリス風の制服姿もみれ、SP姿も見れるわけですからね。

 

③政治家ですよね!?

やはり、政治家を仕事としている人ならば本作を見に来ないといけませんよね。全然、政治への文句や、日本の政治批判に直接つながる描写はないわけですからね。現政権の安倍内閣総理大臣も見ていただけのであれば、菅官房長官もみないといけませんね。

そして、後々日本の映画界を経済的に潤うようにしていただきたい。韓国の映画業界のようにもっと資金面の援助をしていただけると嬉しいですよね。

 

 

5.本作の評価

映画.com ☆3.7

Filmarks  ☆3.8

coco映画 満足度64%

YAHOO! ☆3.89

Movie Walker ☆4

ぴあ映画生活 ☆3.5 68点

そこそこ、満足しているという評価です。前作と比べれば歴然です。

三谷作品のコメディ映画を好きな客を取り戻したといっていいかもしれません。

またどこの映画館も笑っている客が多かったようです。

 

6.本作を勧めたいポイント!

①なにも考えなくても楽しめるコメディ映画、実はそこには皮肉も隠れている政治映画!

三谷監督の力量によって、小難しい問題には首を突っ込まず、役者を上手く使い、チューリップハットと丸サングラスとつけ髭、特殊メイクの福耳、口が臭い禿げた親友など個性の強い面々が織り成すコメディのため、なにも考えなくても楽しめるコメディ映画。しかし、やんわりと流されてしまうであろう問題も映画で疲れています。身内への利益誘導建設計画、女性軽視発言、国会を私情で休むなど、現代の政治で問題として取り上げられてしまい、全然政治と関係ない印象のものが、よくニュースで流れています。一方で、消費税の引き上げ、生活保護の体制が整っていないなどの面も描かれています。現状への皮肉もちらっと入っている印象をもたせたところは、実は見どころの1つとも言えます。

②政治への勉強にも実はなる!?

記憶を失った総理は、中学生程度の記憶で、まるで政治を知らない人間となります。まっさらすぎて、政治の話がなんなのかわからず、限界を迎えたときに、小学生のときの担任だった先生に政治の勉強を教えてほしいと依頼します。そのため、三権分立から話が始まるため、小学校の教科書レベルで学べるわけです。映画でそこまで詳しくは写されていませんが、パンフレットには詳しく書かれていて面白いです。ぜひパンフレットを買うと、意外と忘れていたこともあって為になりました。

③「七つの会議」をやわらかく、「新聞記者」を小学生向けにした、誰でも見れる映画。

似ている映画と言えませんが、「七つの会議」や「新聞記者」という映画は、サラリーマンや高齢者向けの映画と言えると思います。「日本のいちばん長い日」、「華氏119」とかもですね。限定されているけれど、すごくヒットしている映画作品です。本作も一見硬派な印象を抱く危険性がありますが、小学生でも笑えるコメディです。より本作をヒットさせるためには、子供にも受けないといけませんからね。親子連れで見て、わからないところは補正していただけると良い。そんな流れで宣伝できると面白そうです。

 

7.まとめ

 映画的価値観はちょっと低いです。「スミス都へ行く」や「デーヴ」にはとどかない。やっぱりコメディ映画として優秀ではあるのですが、上記の2作は映画的価値観として面白いんです。このレベルまできてくれると本作をもっと語りたくなるんですがね。語りたくなる映画は絶対映画的価値が高いので。